前頭芋

詩人・来空(らいくう)による、リトル・ポエムの世界

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合唱するポエムと尺八 第三回:碧梧桐

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菖童「芭蕉と黒沢琴古のように、求めていた美学に共通のものがあったのではないか。
第一回、第二回の山頭火、放哉は放浪の詩人。来空さんにもその流れで心惹かれるものがある。」


★演奏風景(you tubeに飛びます↓)

河東碧梧桐の句を朗読(尺八の曲は「よしや鈴慕(れいぼ)」)
http://www.youtube.com/watch?v=KrnGyc60S94
「尺八も詩(短律)も音(拍)を出すことが基本。原始的な理論。 」

●河東碧梧桐(1983?1937)《プロフィール》

本名秉五郎。愛媛県松山市。父清渓は松山藩儒者。六男三女の五男。松山中学から京都三高、仙台二高中退。子規門。

新聞記者時代、明39年から全国行脚(『三千里』『続三千里』に収録)、俳句運動をおこす。俳句新傾向論、俳句無中心論を発表、所謂自由律(非定型)俳句を先動する。

大4年、新傾向俳句機関誌「海紅」(中塚一碧楼を起用)を発刊。大12年、個人誌「碧」発行、西洋美術論、蕪村研究等を掲載、14年に同人誌「三昧」と改め15年から<我等の立場>を連載する。これは短詩主張を貫いた、時代で最も斬新な詩論である。ここには<和歌俳句領域撤廃論>も述べられている。又、急進的な詩論を共に、「三昧」には口語方言・ルビ付俳句と呼ばれる作品が発表された。これは当時大変な不評をあびたが、今日では、“日本短詩の弁証法的必然を形姿にとどめたもの”として詩歌の分野で評価が高まっている。

碧梧桐は詩、文学の業績のみならず、書、山岳、旅行、能楽、美術評論の分野でも一流で、すばらしいものを残している。蕪村研究は碧なくしては語れないし、書表現がまた卓越している。

大正2年、洋画家中村不折らと書の研究会「龍眠会」をおこし、漢魏六朝の木簡碑学系の書を広く研究、かつてない斬新な表現で、変化に富んだ芸術的作品を全国に多数残している。

昭8年、還暦祝賀会で俳壇引退を声明。この後も文筆活動は倦むことなく続けられ残した著作は膨大なものがある。この資料は平成に入り、初めて、来空によって全集20巻として編纂された。

昭12年2月1日、賜チブスに敗血症を併発し急死した。65歳。

変化して停滞を知らぬ碧梧桐は、没個性化に向かう美意識の集約時代に、一人その詩魂を矜持していた。


●この日は、ある方が碧梧桐の絵を持ってきてくださいました。

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来空「「碧」を分解すると「王白石(おうはくせき)」。絵を描く時のサインとして用いた。
他にも文字を逆さまにしたり、いろんな冒険してる。」


●〔河東碧梧桐作品(大正五?十三年)〕来空の一言付き

大正五年

・ 氷砕く黒塀の迫る也
・ 物さながら炭割れて快志(こころよし)

・・・割れて快いんだ。
「人さながら人死んで快志」僕の場合そういう世界もある。
みんな生きるとか死ぬとかこだわりすぎ。
生きてるうちに激しく生きてやろうとは思ってますよ、でも生きることを大事にしすぎると、死ぬことを大事にしない。
・ 冬田の蓬重ねたる
・ 雪漂へる水焚火の跡に
・ 干底の水に道づくりつつ
・ 間を割く根立てる雲の
・ 雲の峰稲穂のはしり
・ 扇の絵蝕み通したる
・ 泳ぎ出でたる陸たちさわぎ 

・・・泳がないかぎりはたちさわがない。
・ 蝿打つまで蝿叩き無かりし
・ ダリア作る藁帽があり
・ 蝉さし竿立てし人通る
・ 雨なき土棗はおどる
・ 仏間晴々し魂匂ふ
・ 栗拾い拾いそめたる
(5・7)
・ 踊の輪われを包めり(5・7)
・・・5・7・5であればその後に5字。“言おうと思えばどうとでも言えるが、しゃべりすぎ。あとはご自由に”と言っている。

来空「最初から五七五に当てはめようとするのは、元々ある絵に色を塗っているだけのようなもの。
五七五になって「落ち着いた」なんて言っているが、安心の中にポエムはない。
ポエムは冒険を意味する。心臓は常に新しい血を作り出してる。それと同じ考え方。」
「散文は一般的にわかりやすいけれど、本当に叫びたいことは消えてなくなっちゃうところがある。」

・ 葡萄善兵衛が仕事着姿よ
・ 倉より出して火鉢の数よ
・ 返り花を見し戻りなり
・ 炭挽く手袋の手して母よ
・ 水排けがわるい大根葉つパ
・ 真上の雷日あたりそめし
・ 萩咲く原水踏むまで行く
・ 水出まされば蓮折れて

大正六年

・ 炬燵にかくす涎この年
・ 子供に炬燵してやれそういふな
・ 牡蠣飯冷えたりいつもの細君
・ 嫂との半日土筆煮る鍋
・ 凧持たぬ子水につぶてする
・ 煤黒な幹の緑わきたり
・ 木の芽吹く空清水の音の
・ 苗代を立つ手をはたき
・ 鷺はずるい鳥ガアと鳴き
・ 泣く話しての笑ひ話よ
・ 毛虫が落ちてひまな煙草屋
・ この蜂黄色い脚にてかけり
・ これだけの鉢の菊の中
(5・3・5)
・ 芙蓉見て立つうしろ灯るや
・ 手袋をとる仏壇の前也

大正七年

・ 鵜のをる荒波のうちあがり
・ 人とうれしく彼も炭火ふく
・ 肉かつぐ者に轍氷りたり
・ 麦踏んでまだ土離れず我等
・ 堕落したのだ我手冬瓜
・ 水の際までの柳の菜の花(揚子江を遡って黄浦江に入る)
・ 稲妻が海に入る真近くも(馬尼刺入港の前夜)
・ 私にすがる子よ汗疹に触れじ
・ 睡眠不足の筆噛む我が歯
・ 肉かつぐ肉のゆらぎの霜朝
・ 菊がだるいと言った堪へられないと言った


大正八年

・ 芝桜にそれぞれの手を伸べ
・ 薔薇剪りに出る青空の谺
・ 彼らの唄ふ歌森中の水嵩なるよ

大正十年

・ 馴れて甲板の雪踏みすべる(外遊第一吟・此一句上海を離れた無線電信で来る)
・ ミモーザ活けてベッドに遠かった
・ 落ちて柄を立てて反り打つ葉

大正十一年

・ 青空に寝ころべば眼をやるは空(羅馬ペラチノ丘)
・ 草を抜く根の白さに堪へぬ
・ 炭が火になるほのほをあげる

大正十二年

・ 彼芝刈る前のあるき貪る(大連)
・ 咳をさせまいとするかひがあった
・ 山が月の傘を半分かぶった
・ 両手に提げたバケツの空な(震災雑詠)
・ 栗の皮が枕元に溜つた

大正十三年

・ 半日山をあるく春になつた
・ 博労ぬかるみにおとす銭
・ 雨の落ち来る顔に落ち来る



最後に来空の最近の作品を朗読(you tubeに飛びます)
http://www.youtube.com/watch?v=tpJAJdOlGbg

・ よろこぶ遠足が来た死が来た
・ ビッグボーンが赤ん坊!グッピー(回文)
・ ポッポポニョ夜にポポ壷(回文)
・ ホーケーポニョ日本ケーホー(回文)
・ 狐っ狐狸やニンゲンにやりごっこ(回文)
・ 天下人!イラダツ盥ダム(回文)
・ バカを河馬かばうバカバカおバカ(回文)
・ 成型てる手品(回文)
・ 国々亡び青い地球と人々が来た

・・・7・7・7。たくさんの国が滅びた。残っている国も絶対ではない。
元々は青い地球。
・ 「あいうえ」のち「お」を「わをん」

2010.8.24
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